一般社団法人エビデンスに基づく統合医療研究会

統合医療とは


統合医療とは?‐患者が求める新たな医療体系

近年、医学・医療の目覚しい進歩と生活環境の整備により、最長寿国である我が国はまさに超高齢社会に突入しています。疾病構造は急性疾患から慢性疾患へとシフトし、多くはがんを始めとする生活習慣病であり、医療費は益々高騰を続けています。現代西洋医療はこれら慢性疾患に対し、統計学に基づいた画一的な治療を施してきましたが、それには何らかの限界が認められます。

さらに、現代西洋医療(医学)は細分化・専門化が進み、基礎の領域ではマクロからミクロへと、また臨床では臓器別の部分部分の医療が展開され、その結果全体を見失う状況に陥っていると言われています。すなわち、“木を見て、森を見ず”の状態と言えるのです。実際、医療現場において、患者は複数の診療科にかかっていることが多く、各診療科間の連携が希薄となり、特に“こころの問題”が疎かにされています。その結果、複数の診療科にかかっている患者一人ひとりに対する責任の所在が分散し、患者-医師関係が疎遠となり医療不信へと繋がっているのではないかと考えられています。

一方、患者の疾病に対する意識構造も受動から能動へと変化しています。IT等の急速な情報の普及により、患者の予防医学や健康への関心が増しています。その中で患者は生活の質 (QOL) を重視した医療を求めています。

そうした医療として、補完代替医療 (CAM) が挙げられますが、これらほとんどがエビデンスに裏付けられていないのが現状です。しかし、がんなどの生活習慣病を始め、認知症や災害後の後遺障害など、すぐには回復が難しい患者は、従来の西洋医療だけでなく、機能性食品や鍼灸、アロマセラピー、ヨーガなどのCAMを含めた幅広い選択肢の中から信頼できる医療が提供されることを望んでいます。患者の多様化するニーズを満たし、QOLの向上を図るためには、患者の立場にたって、それらを開発していくことが必要となりますが、そのためにはエビデンスが必要となります。そこで、エビデンスに担保されたCAMを現行の医療に有機的に融合させ、全人的な立場で治療する、新たな治療体系としての統合医療(Integrative Medicine)が求められています。

統合医療は、まさに患者が求めている医療体系であり、その共通する要因としては、以下のような項目を挙げることができると思われます。

       ライフスタイルの重要性:健康であるか、病気になるかは、遺伝子とライフスタイルのあらゆる面(食事、運動、休息と睡眠、ストレス、人間関係の質、職業など)との相互作用によって決まる。ライフスタイルの選択は、遺伝子以上に疾病リスクに影響するかもしれないし、病歴聴取の際に中心となる。従って、予防こそが最善の医療であり、疾病の予防が統合医療における究極の目的である。

       生体が有する自然治癒力:現行の医療も基本的には同じであるが、統合医療では、生体が自然治癒力や自己診断、自己修復、再生ならびに外傷や喪失に対する適応性を有していると考える。治療の主要な目標はこの生来の能力を支持し、促進し、増幅することにある。

       全人的医療(whole person medication):現行の医療が専門医による部分的医療であるに対して、統合医療は全人的医療である。すなわち、患者を単なる肉体とみているわけではない。患者はまた、知的で感情的な存在であり、スピリチュアルな存在であり、夫々が特定の地域共同体や社会の一員でもある。人間生活のこうした一面が健康に関連し、また疾病に対する正確な診断や効果的な治療と関連していると考える。

       医師-患者関係の重要な役割:言うまでもなく、医療における、医師-患者関係の構築は重要である。現行の西洋医療は、限られた診療時間の中で、良好な医師-患者関係が構築されていないことをしばしば経験する。しかしながら、医師が患者と向き合って、彼らにじっくりと耳を傾けるとき、そのことだけで治療が施される前から“治療(healing)”がすでに始まっていることになる。

       NBM (narrative-based medicine) そもそも、人は本来普遍的なものではなく、一人ひとり独立した存在であり、その人の言葉や感性を介して物事を理解し、その認識を通じて、隣人・友人、そして集団・社会と関わっている。従って、疾病の治療においても、集団として、あるいは普遍的なものとして把握するのではなく、一人ひとり個別に対応すべきとする概念 (NBM) があり、その下でテーラーメイド医療として実現させようとする方向性が生まれる。

 以上より、統合医療が広く認知されるためには、統計学に根ざした現代西洋医療とは異なった形でのエビデンスの構築が必要である。確かに、科学性/普遍性を求めるEBMと感性/個別性を求めるNBMは両極にある。この両者は代替できるものではなく、両者が相互に補完し合って治療にあたる、エビデンスに基づく統合医療 (eBIM; evidence-based Integrative Medicine) が求められている。


 

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